
Release:2025.02.14 Update:2025.02.14
ヤマシタは、介護用品レンタル・販売事業やホテルリネンサプライ事業、病院リネンサプライ事業などを手がける企業です。当社は30代の経営層を中心に、現在300億円規模の売り上げを2030年までに850億円まで伸長させるという「長期ビジョン2030」を掲げ、その主軸となる「在宅介護プラットフォーマー」構想の実現に向け、生産性向上や介護領域におけるユーザーアプリ等を含めたCX(顧客体験価値)拡張を目的にDXをスピーディーに推進しています。そのため、直近ではシステム開発の内製化に向けて他業界からのデジタル人財の積極採用を行っています。
今回は、ヤマシタの技術アドバイザーに就任した山口徹氏(株式会社タイミー 執行役員 CTO・株式会社マギステル 代表取締役)とデジタルアドバイザーの池照直樹氏(日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 常務執行役員 CDTO DX推進本部長)、技術責任者の中川卓巳による対談を実施。今後のヤマシタのデジタル活用や開発組織の展望などを聞きました。
写真左から、デジタルアドバイザーの池照直樹氏、技術責任者の中川卓巳、技術アドバイザーの山口徹氏
ヤマシタの事業ポートフォリオに惹かれて、技術アドバイザーに
――これまで山口さんは株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社ベルフェイスなどで実績を残され、現在は株式会社タイミーにて執行役員 CTOを務めています。そんな山口さんが、ヤマシタの技術アドバイザーに就任した経緯についてまずは教えていただけますか?
山口:技術責任者である中川さんとはディー・エヌ・エー時代の同僚であり、中川さんの前職を技術アドバイザーとして支援していたこともあります。ヤマシタへの転職の相談に加えて、現職での業務の相談などにも乗っていた流れで、今回の話につながりました。
代表取締役社長の山下和洋さんともお話ししたのですが、ヤマシタの「在宅介護」を中核とした事業ポートフォリオは社会的貢献的な意義も高く、多くの人が共感できるものであり、いつかは自分ごととして取り組まなければならないものだと感じました。加えて、中期経営戦略についてもお聞きして「自分のキャリアを活かせるのではないか」と考えたのが大きな理由になっています。
技術アドバイザーとしては、まずは現状の課題を整理して何を優先的に取り扱うのかと、それぞれの課題にどう対処していくかのアドバイザリーを手始めに行います。その中で、技術組織の立ち上げや採用・育成といった組織開発や、技術戦略の立案なども支援していけるのではないかと考えているところです。また、中長期的にはプロダクトマネジメントを根付かせていく必要もあるので、どこかのタイミングでプロダクト組織の立ち上げも支援していくことになるはずです。
ヤマシタにおける技術責任者の役割とは
――ここからは、中川さんが担う技術責任者のポジションについて話したいと思います。
山口:それでは、まず私から一般論としてのCTOの役割や職責について説明します。そのうえで、ヤマシタにおける技術責任者の役割をお話ししましょうか。通常、スタートアップでは企業のフェーズが進むにつれて、CTOの役割は変化していきます。
アーリーフェーズでは、CTOは経営者でありながら実質的にはテックリードのような働き方をします。自ら積極的にコードを書き、プロダクト開発を主導するケースが多いです。また、インフラの管理や品質管理、コーポレートITなど、システム全般を幅広くカバーする必要があります。プロダクトマネジメントも、CTO自身が担うか、あるいはCEOをサポートする形になることが一般的です。
ミドルフェーズに入ると、チームの人数が徐々に増え、組織体制を整える段階に差しかかります。このフェーズでは、エンジニアリングマネージャー(以下、EM)を配置するなどして、組織運営に関する職務を分担するようになります。さらに進むと、CTOはテクノロジーやエンジニアリングに専念する役割や、複数のEMを束ねるEM of EMsのような立場にシフトします。
レイターフェーズやIPO後には組織の規模が大幅に拡大するため、このタイミングでVPoEを採用し、CTOはテクノロジーやエンジニアリングの中長期的な戦略立案や推進に注力する役割に移行します。プロダクトマネジメントはCPOが担当することが多いですね。この中長期的戦略に基づいて組織設計のコンセプトを立て、VPoEと二人三脚で組織を作り上げるスタイルが一般的です。
会社によっては、未来志向である戦略をCTOが担い、現在志向である戦術や現場運営をVPoEが担う、といった役割分担をしている場合もあります。
――ヤマシタにおいては、技術責任者である中川さんにどのような役割が求められているのでしょうか?
中川:山口さんの話を踏まえると、開発組織の規模としてはアーリーからミドルくらいのフェーズであり、システム全般のカバーや組織体制の整備などが求められているように思います。一方、会社の規模はPost-IPOなので、すべてのフェーズの要素を部分的に含むという一番面白い環境ですね。
ヤマシタに技術責任者を置く意義についてもお話しさせてください。背景として、ヤマシタは介護用品やリネンのレンタル・販売事業を展開しており、そのビジネスモデル上どうしても労働集約型になりやすい側面があります。
業務効率化などのためにシステムへの投資を行いましたが、内部に開発組織がなく外注でシステム開発を進めた結果、使い勝手が悪くてアジリティも上がらないという課題が生じました。さらに、多くの顧客情報を保有しているにもかかわらず、データ基盤が整っておらず、十分に活用できていないという懸念もありました。
そこで、内製化を目指すために私が参画しました。現在の最優先ミッションは、開発組織の立ち上げと、テクノロジーを活用したプロダクト開発体制の整備です。それに加えて、将来的にはソフトウェアを活用した新規事業も立ち上げていきたいと考えています。
山口:エンドユーザー向けサービスの構築だけでなく、社内の業務プロセス改善にフォーカスしたDX(デジタルトランスフォーメーション)も進める必要がありますよね。初期段階でその両面をどのように乗り越えるかが重要です。その後、企業のフェーズに応じて最適なアーキテクチャ基盤を構築し、それに基づいて組織の組成やプロダクト開発を進めていくことが求められます。
すべてを内製化するのは現実的に難しいですから、場合によっては外部から技術を導入したり、パートナーシップを組んだりといった選択肢も検討する必要がありますよね。そうした意思決定が、技術責任者としての重要な役割になるはずです。
「すでに年間約300億円の売り上げがあるスタートアップ企業」のような環境
山口:開発組織の立ち上げという意味ではアーリーフェーズのようですが、ヤマシタには既存事業という強力なキャッシュ・カウ(安定した利益を上げる事業)があるのが大きいですよね。
池照:私もそう思いますね。私が以前CDOを務めていた株式会社カインズも、もともとは社内のデジタル体制がなかったため「売り上げが4,000億円規模の状態からのスタートアップ立ち上げ」のような状況でした。それだけの事業規模があると、面白いことがたくさんできましたね。ヤマシタも、年商300億円規模です。事業基盤がしっかりしている中で多くの挑戦ができる環境というのは、希少であり社員一人ひとりができることの幅も広がるという、エンジニアにとっては一番魅力的な環境ですね。
歴史の長い企業ですと、新しいことができなかったり社内調整ばかりで物事が前に進まなかったりします。逆に、スタートアップでは資金不足で挑戦が制限されることが多いです。ヤマシタの開発組織は、若い経営陣の元、その両方の良い面を取り入れ、エンジニアが活躍できる場所になると期待しています。
――技術戦略やプロダクト戦略の観点から、2025年に取り組みたい施策はありますか?
中川:例を挙げると、既存システムの使い勝手の悪さが社員の生産性低下を招いている点が課題です。もともと外部ベンダーが開発した複数のパッケージを、無理やり連結して使っているような状態なんです。
池照:こうした事象は、伝統的な会社のシステム導入ではよく見られるんですよね。システムを局所最適化して取り入れてしまい、つぎはぎのような状態になってしまうという。
山口:いろいろな課題をリストアップして、それぞれを解決した場合に業務がどれだけ改善するかをスコア化しながら、順次解決していけると良いですね。
中川:他には、社内のメンバーにプロダクトマネジメント的な視点が不足していると感じています。外注をベースとしたシステム開発に慣れているので、「この日までにこれを作れますか」というウォーターフォール的な発想になりがちなんですよね。だからこそ、何かを作る前の段階で「本当に適切な課題解決の手段は何か」をしっかり考える姿勢を徹底したいです。逆に、そうしたプロダクトマネジメントの経験のある方は即戦力として早期に活躍できる環境ともいえます。
ちょうど今、システム再構築に伴い営業ジャーニーやカスタマージャーニーの情報を整理しています。課題をそこにマッピングして、優先順位をつけながら進めていく予定です。
「私がレールを作る」という思いのある人であってほしい
――ヤマシタでエンジニアとして働くことの面白さは、どのような点にあるのでしょうか?
池照:この会社の素晴らしさは「現場」があることですね。エンジニアも希望すれば「現場に行ってきます」と言って、実際に何が起きているのかを自分の目で見て、耳で聞ける。この経験は本当に貴重です。エンジニアが顧客の課題を発見したり、場合によってはプロダクトマネージャーに近い仕事をしたりといったことも可能になります。新規事業を行う際も、すでにある「現場」でPoCができるというのはエンジニアにとっても大きな魅力ではないでしょうか。
これを自社の既存のビジネスモデルの中で、自己完結型で実現できるのは珍しいケースです。それに、開発組織を立ち上げたばかりということもあり、特定のエンジニアが幅広い業務に携われるのも魅力です。一般的な企業では、業務のどこかで切れ目があるのが普通です。「ここは私の仕事、ここから先は別の人の仕事」という感じに。でも、ヤマシタでは仕事にEnd to Endで取り組めるのが良い点です。
山口:それに「在宅介護」という、誰にとっても無関係ではないテーマを事業にしている点も大きいです。この領域にはまだまだ解決すべき課題が多く、業界内でもDXに積極的に取り組んでいるヤマシタが貢献できる余地は非常に多くあります。もちろん、少子高齢化の世界的な進展により、市場規模も国内だけでなく、将来的には海外まで含めて拡大していくはずです。社会的意義に共感するエンジニアが、今、取り組むべき課題といえます。
中川:この規模の企業で、大掛かりなシステムの再構築に携われるのは、なかなかないチャンスだと思います。これは採用面接などでもよく言うんですが、たとえば銀行のような超巨大な組織では基幹システムの入れ替えはほぼ不可能です。でも、私たちくらいの事業規模であれば、ギリギリ可能なんですよね。それに、ヤマシタは非上場企業でオーナー社長制のため、意思決定や変化のスピードがかなり速いのも特徴です。
――そうした開発組織の中で、どのような人材が求められていますか?
山口:先ほどの池照さんの話にも通じますが、「上から下まで何でも手を出したい」というタイプのエンジニアが非常に向いていると思いますし、入社後、早めに活躍できると思います。
中川:「しっかり整備されたレールの上を走りたい」と考える人だと難しいかもしれません。それよりも、「私がそのレールを作るんだ」くらいの意気込みのある人が向いているでしょうね。自分で課題を見つけて積極的に動ける人。そして、エンジニアリングだけにとどまらず、企画やビジネスの領域にも手を伸ばせる人が一番合うと思います。今後一年の内にエンジニア組織を整備していく想定ですので、「今」入社いただくことで、今後の中核人財として活躍いただける余地は非常に広いと考えています。
池照:それから私個人の思いですが、何よりも「いいやつ」であってほしいです。ここで言う「いいやつ」とは性格うんぬんではなく、前向きに一生懸命仕事に取り組む人のことです。前向きな人は、何か課題に直面した際にそこから学び取るんですよ。そして、どんどん吸収して成長していきます。
決して、今の段階ですべての仕事を完璧にできなくてもいいですから、ヤマシタの事業や自分のキャリアのその先にあるものをしっかり見据えて、真摯に働ける人に来てほしいですね。