Release:2025.01.14 Update:2025.01.14
はじめに
はじめまして。株式会社ヤマシタの三浦裕作と申します。 DX推進メンバーによる、ヤマシタのDX職のお仕事紹介コーナーを開始します。初回となる今回は、ヤマシタのDX推進の中核となるローコード・ノーコード開発推進の取り組みを担当する三浦が「DXチームにおける市民開発(ローコード・ノーコード開発)者推進の役割」についてご紹介します!
私は2023年10月に入社し、現在は社内のDX推進を中心に取り組んでいます。ヤマシタでは、現場の社員が主体的に課題を発見し、解決に向けた取り組みを進める「ローコード・ノーコード開発」を推進しています。この取り組みは、社員一人ひとりが自身の業務をより深く理解し、そこから生まれる課題に対して柔軟かつ迅速に対応することで、業務の効率化や価値創造を実現するものです。
ヤマシタでは、DXを加速させるために「ローコード・ノーコード開発者」「シチズンデータサイエンティスト」「AIトレーナー」「プロダクトオーナー」の4つのDX市民を育成することを目標としています(詳細は添付の図をご参照ください)。それぞれの役割が、テクノロジーの活用を通じて新たな業務スタイルや業務範囲の変革を促進しています。特に、「ローコード・ノーコード開発者」は、現場の課題を主体的に発見・解決する役割として、全社的なDX推進の原動力となる重要なポジションです。
本記事では、ヤマシタにおけるローコード・ノーコード開発の具体的な事例をご紹介するとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)が当社にもたらす未来像について考察します。「お客様を原点に」という企業理念を基軸に、私たちがどのようにDXを通じて更なる成長と変革を目指しているのか、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
▼ヤマシタの”DX市民” 4タイプ
ヤマシタが目指すローコード・ノーコード開発の未来
ヤマシタでは、現場での「課題の発見」から「Power Platformの活用」、そして「解決」までのプロセスを日常業務の一部として根付かせることを目指しています。この取り組みは、2027年に全社員の10%である360人がPower Platformなどを用いて業務改善を行える状態を実現することを目標としています。
まず、2024年には41名のローコード・ノーコード開発者を育成し、研修の定期化やコミュニティの活性化を進めています。具体的には、全事業所や部門を横断したローコード・ノーコード開発の取り組み、成功事例の共有と啓蒙活動、さらには開発物を共有し合うピッチ大会の開催を予定しています。
その後、2025年にはローコード・ノーコード開発者を120名に増やし、初級から上級に至るまでの様々なレベルのローコード・ノーコード開発者を育成。これにより、DX推進やシステム部門への異動事例を増やし、社員個々のスキルを切磋琢磨する環境を整えていきます。
▼中計資料
全社横断のローコード・ノーコード開発研修実施
ヤマシタでは、ローコード・ノーコード開発の第一歩として、Power Platformを活用した研修を実施しています。今年度は全社横断で3回、各回25名程度の社員が参加し、業務改善のためのスキルを習得しました。
第1回研修では、介護用品のレンタル・販売を行うホームケア事業部の社員が4日間にわたり基礎スキルを学びながら、自らの現場課題に向き合いました。研修の初日では、Power Appsを使った簡易アプリ開発にチャレンジ。続く2日目には、現場の課題を徹底的に抽出するアイディアソンを実施しました。3日目にはハッカソン形式で、課題解決に向けたアプリをチームで開発。最終日には、完成したアプリの効果をプレゼンするピッチ大会を行い、現場視点に基づいた創造的なソリューションが数多く生まれました。
特に、研修の2日目に行われるアイディアソンでは「デザイン思考」を用いて、現場の課題を深く掘り下げ、具体的な解決策を生み出す活動を行いました。このアプローチにより、研修参加者は単なる業務改善ではなく、利用者視点での本質的な課題解決に向けた発想力を養いました。
さらに、「Yes, and」の姿勢を重視し、失敗を恐れずに挑戦する「Fail Early, Fail Often, Fail Better(早く失敗し、たくさん失敗し、より良い失敗を)」精神のもと、プロトタイプを素早く作成し、検討に時間をかけるよりも、実際に検証して改善を重ねることを推奨しています。
この実践的な研修内容が、社員一人ひとりの主体性を引き出し、ローコード・ノーコード開発文化の醸成につなげています。
研修を通して誕生したアプリ事例:営業車両管理アプリ(ホームケア事業部)
Power Platform研修を通じて誕生した「営業車両管理アプリ」は、日頃の業務における面倒な作業を削減する成功事例のひとつです。このアプリは、従来の車両チェックに伴う入力作業や管理業務をデジタル化し、大幅な効率化を実現しました。
アプリの仕組みは、以下のように構築されています:
・Power Apps:社員が報告内容を入力
・Excel:入力内容が自動的に蓄積
・Power Automate:データが自動的にTeamsで管理者に通知される
このアプリの導入により、週平均5分以上の入力作業を削減し、管理業務の手間も95%削減。一人当たり月15分の時間短縮を実現しました。また、紙代や印刷代、保管場所のコスト削減に加え、紛失リスクの軽減にもつながっています。
このアプリを開発したのは、営業職に従事する社歴24年の40代の社員です。アプリ開発の経験は一切なかったものの、Power Platform研修を受講する中で、現場の課題を解決したいという強い思いから取り組み、実際に開発を成功させました。その結果、自らの業務負担を軽減するだけでなく、所属営業所の効率化にも貢献しました。
具体的な成果として、ROI(投資利益率)は845%を記録しています。
▼営業車両管理アプリの画面
アプリ開発を全面サポート
Power Platform研修を通じてローコード・ノーコード開発の基礎を学んだ社員に対し、研修後も伴走支援型のサポートを実施しています。DX推進チームが、各受講者と密にコミュニケーションを取りながら、アプリの要件定義から実際の開発までを全面的に支援してきました。
具体的には、研修受講者全員と打ち合わせを重ね、現場のニーズを的確に反映したアプリ開発設計書の作成をサポートしています。
こうした取り組みの成果として、わずか半年間で79件のアプリを開発し、そのうち8件が全社標準アプリとして業務改善に貢献。さらに、現在も16件のアプリが全社展開に向けてトライアル中です。これらのアプリは、日常業務の効率化や正確性の向上を実現し、全国各地で現場のニーズに応えています。
ヤマシタでは、ローコード・ノーコード開発を単なる業務改善に留めず、社員一人ひとりが「現場発信で課題を解決する文化」を根付かせることを目指しています。私たちの伴走支援型アプローチを通じて、ローコード・ノーコード開発の可能性を最大限に引き出し、DX推進をさらに加速させていきます。
▼開発設計書(構成図)
DX推進も率先垂範
DX推進の旗振り役として、私自身も率先してアプリ開発に取り組み、その成果を全社展開しています。その中でも代表的な事例が「福祉用具配置ARアプリ」です。このアプリは、福祉用具の設置をARで簡単にシミュレーションできるツールで、現場の提案業務を効率化するとともに、利用者の満足度向上にも大きく貢献しています。
このARアプリは以下のような機能を備えています。
・ARカメラ機能:選択した福祉用具の3Dデータを実際の撮影場所に表示し、設置イメージを直感的に確認。
・測定機能:カメラを使用して物体の長さを計測できる機能を搭載(iPhoneの計測機能に近い操作感)。
導入効果として、提案時に商品開封を防ぎ、無駄な出荷を抑えることができるようになりました。さらに、PoC(概念実証)段階で既に効果を実証しており、年間投資額の約30倍の効果を想定しております。
現場からの声として、ご利用者様から設置イメージが掴みやすく、納品後のギャップがなくなったとのご意見や、他社の提案資料に勝った事例、ケアマネジャーとの情報共有がよりスムーズになった事例が挙がっています。このように、現場ニーズに基づいた機能が、業務効率化と顧客満足度向上の両面で高い成果を上げています。
▼ARアプリ
今後の展望と、あなたへのメッセージ
ヤマシタでは、今後もローコード・ノーコード開発を通じた業務改善とDX推進をさらに拡大していきます。2027年には全社員の10%がPower Platformを活用して業務改善を実現できる状態を目指し、研修やサポート体制を強化していく計画です。また、現場の声をより深く理解し、的確に反映するアプリを開発することで、社員一人ひとりの創造力を活かした新たな価値創造を目指します。
この記事を読んでくださった皆さまへ、ヤマシタが取り組むローコード・ノーコード開発の挑戦を共有できたことを心から感謝申し上げます。私たちは、現場の課題解決を現場自身が担う文化を創り出し、それが会社全体の成長に繋がると信じています。もしこの取り組みにご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一緒にヤマシタの未来を創っていきませんか?
社長室 DX推進 三浦 裕作 ローコード・ノーコード開発を自ら手掛けながら、開発者の育成やDXツールを活用した業務効率化プロジェクト を推進している。 |
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